「身体を制するものが心を制する」根性論を超えた心の鍛え方
「コートではだれでもひとりだ。いままでの練習だけが、おまえをささえる」
アニメ「エースをねらえ!」 宗方仁 の言葉
「エースをねらえ!」と聞けば、「コートでは~♫」のフレーズが頭の中で再生される人も、いるのではないだろうか。昭和スポ根漫画の金字塔の一つである。
「巨人の星」しかり、試合に勝つために、血の汗を流し、涙も拭かず、鬼コーチのシゴキに耐える。厳しい練習に打ち込むことが、美徳とされてきた時代。それは、それで胸アツなのだけれども。
その苦しみ、本当に必要ですか?
おそらく、ネガティブな状況、過度のプレッシャーを擬似的に体験させることにより、精神力を鍛え、強い精神力があれば、どんなことでも乗り越えられるという、根性論に根ざした考えが根底にある。
それはそれで、経験則としては一理あるのだろう。昭和の時代の根性論が、すべて否定されるわけではないが、もっと良い方法があるはずだ。
10年程前に「スポーツ健康カウンセリング」というタイトルの研修を受講した。内容は、自律訓練法を用いた、アスリートへのメンタルケアについての研修で、講師は筑波大学(当時)の坂入洋右先生だった。
自律訓練法は、ドイツの精神科医シュルツが、1932年に体系化した、リラクセーション技法である。緊張しすぎても、リラックスしすぎても、試合でベストのパフォーマンスは発揮できない。自分の精神状態を知るための計測をすることと、自律訓練法を用いることで、最高のコンディションを維持するといった内容だったと記憶している。その研修で、メンタル面の状態を知るために紹介されたツールが、こころのダイアグラム(二次元気分尺度)だった。こころのダイアグラムは、その名の通り、自分の内面の見える化である。最小の質問に答えるだけでそのときの気分を知ることができる。
定義できないものは管理できない
管理できないものは測定できない
測定できないものは改善できない
は、W・エドワーズ・デミングの言葉だが、鬼コーチのシゴキが、その人にとって、有効ならばそれを取り入れれば良いし、有効でないなら別の方法を取れば良い。闇雲ではなく、何が一番有効かを探索する事ができるのだ。
ここぞと言うときに力を発揮したい。そう思うのはアスリートだけでなく、現代のビジネスマンにも通じる悩みではないだろうか。職場のストレスマネジメントや生産性向上、労働災害や製品不良を防止するためのリスクマネジメントにも役立ちそうだ。
7月15日に坂入先生の「自律訓練法を活用した”身心”のコンディションの調整法を学ぶ」が、開催される。
今の時代に合った、新しい根性論に進化できるのでは?そんなお話が聴けそうな予感がするので楽しみにしている。
参考書籍「身心の自己調整:こころのダイアグラムとからだのモニタリング」坂入洋右(さかいり ようすけ)著
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「自律訓練法を活用した”身心”のコンディションの調整法を学ぶ」